【とっておき探訪】 第58回 埼玉路地裏銭湯記(熊谷市) ~朝日湯~

更新日:2011年08月04日


重厚感ある瓦屋根

天井が高く、男女の間に風の行き交う開放的な脱衣場

壮大なペンキ絵は、そこはかとなく郷愁を漂わせている

稀少な構造の浴室

タイル絵の景は、箱根芦乃湖

 「八木橋百貨店」は、熊谷市の代名詞とも言える、創業100年を超えた老舗百貨店。地元民からは「やぎはし」の愛称で親しまれている。ここから、徒歩、2,3分の位置。大通りの一歩裏手の路地に佇む伝統銭湯が、「朝日湯」である。
 瓦屋根の純和風な造りは、区画整理の進んだ住宅街にあって、市井の歴史の名残をとどめている。付近には、他にも歴史的な建造物が見られ、今は昔、中山道「熊谷宿」の繁華が伺える。
 古風な暖簾をくぐり、引き戸を開けると、脱衣場の意外な広さに驚く。天井が高く、とても開放的な空間である。番台へ座っている女将さんに420円を渡し、籐の脱衣籠を持って、早速、臨戦態勢を整える。浴室へ入ると、まず目を奪われるのが、男女にかかる大きなペンキ絵。経年劣化が進んでいるが、帆船が一艘浮かんでいる、海越しの富士山が確認できる。作者は、秩父市の二軒の銭湯で見られた、エハラ尚栄堂。遠い富士山と一艘だけ浮かんでいる帆船が、そこはかとなく郷愁を感じさせる。絵の下、浴槽は一つで深浅に仕切り。浅槽には、ジェット噴射が2基。カランは取り外されている箇所もあり、総数は全盛時よりも減っている様子。女湯側の壁には、鈴栄堂の九焼きタイル絵。箱根芦乃湖の、幽玄な景が描かれてある。
 湯上がり。涼みながら女将さんと談笑していると、先程、帰ったお爺ちゃんが帰って来た。「忘れ物ですか」と、すかさず女将さん。どうやら探し物は眼鏡で、ほどなく見つかり、また帰って行った。

(文: 抜井 諒一)

名称 朝日湯 URL 「埼浴」のHP有り
住所 熊谷市本石 営業時間 午後3時30分~午後8時
アクセス 「八木橋百貨店」より徒歩2,3分 定休日 毎週水・日曜日(月ごとに要確認)
TEL 048-521-5165

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